今年度より刷新しましたシリーズもの第3弾「判例から見る人事労務対応策」。
日々の人事労務管理について、法解釈や判例等を交えながら全12回にわたり
分かり易くお届けしたいと思います。是非お付き合い下さい。


会社が従業員を雇い入れる際に、初めて行われる法律行為が雇用契約の締結です。
しかし、雇用契約って何?と改めて問われると意外ときちんと答えられる方は
少ないのではないでしょうか。

何事も最初が肝心ですので、今回はこの雇用契約についてその定義も含めて
改めて一緒に考えてみたいと思います。

民法623条において、雇用契約の定義がなされております。
「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、
相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」。
要約しますと、働いてくれる代わりに(対価として)お給料を支払いますよ
ということをお互いに約束するということです。

約束するとは契約を締結することですが、ではどの時点で契約成立となるでしょうか?

雇用契約は、双方の意思の合致のみによって成立する契約(諾成契約)ですので、
契約書の締結や行政官庁への届出などが効力の発生要件ではありません。
ですので、例えば応募者からの電話で「今日から働きたいです」「いいですよ」
という会話がなされた時点で、雇用契約は成立しているのです!(ご存知でしたか?)

仮に給与や労働時間など労働条件その他諸々について、きちんと説明・理解
されていなくても、既に双方の意志が合致(働きたい・いいですよ)してますから、
雇用契約自体は適法に成立しています。

これが雇い入れの際、雇用契約の内容をめぐる大きなトラブルの原因に
なっていると思われます。
本来、契約であれば「賃貸借契約」や「売買契約」のように、何をどのような
条件で契約を締結するのか、その内容の仔細について双方協議し合意されて
いなくてはなりません。

雇用契約は日本古来の風土や労働慣習にもよるのか、この「契約」という
側面が過少評価され、むしろ「お金のことや休みのことを最初からとやかく
言うものではない」とう風潮があったように思います。

しかし、考えてみて下さい。
雇う側にしても雇われる側にしても、雇用契約ほど大きな契約は他に存在しない
のではないでしょうか。会社にとっても人件費は大きなウエイトを占めますし、
労働者にとっては生活の糧の全てをそこから得るわけですから、内容について
しっかり合意しないまま契約を締結すれば、後々になって知らない・聞いていない
といったトラブルになるのは、火を見るより明らかです。

派遣やパート・契約社員など働き方の多様化とともに雇用契約の内容も
細分化されています。
そのような背景のもと、平成20年3月に労働契約法が成立しました。今までの
労働「基準」法ではカバーしきれないその多様化した「契約」内容について、
過去の判例をもとにルールを整備して行きましょうというのが狙いです。


「最初が肝心」「終わり良ければ全て良し」
この諺は雇用契約の本質を現す言葉ではないでしょうか。


今回は最初の取っ掛かり部分についてでしたが、次回以降はその中身について
各ステージ毎にフォーカスし、その対応策についてお話したいと思います。