前回、企業が65歳までの安定した雇用を確保するためには3つの選択肢が
あるとお話しました。

3つの中から選べばよいのですが、まずは導入するにあたってそれぞれの制度の
内容を十分に把握しておく必要があります。


今回はその前段階として、高齢者を雇うことのメリット・デメリットとは
何かを考えて行きたいと思います。


まず3つの選択肢をおさらいしておきます。

A:定年の引き上げ

B:継続雇用制度の導入

C:定年の廃止


いずれの制度も雇用を確保するためのものであり、現在設定されている
雇用終了の時期を延長させるもの(雇用延長)です。


では、雇用延長によって企業にもたらされるメリットとはどういうものでしょう。


まず最初に技術伝承の面でのメリットが挙げられます。


社内で後継者が十分に育っていない状況であれば、高齢者が保有するその高い
技術や経験・ノウハウを引き続き活かして貢献してもらえば、企業にとって
大いにプラスになります。

特に技術職、専門職、研究職などの場合、その存在価値は大きいと言えるでしょう。



次に人員の安定に貢献します。すなわち労働者の確保が確実になります。


昨今ではニートやフリーターの増加によって、安定した人員の確保に
悩まされている企業は少なくありません。

その点、会社の事情や職務もよく理解した高齢者が引き続き人員として
あてに出来るのであればこれも大きなメリットです。


新入社員をを1人雇うよりは格段にリスクは少なくて済みますし、
採用コストもぐっと抑えられます。

手間暇掛けてこれからようやく一人前になってもらえる、と思った瞬間に
「退職します」なんてことになると元も子もありませんよね。



最後に賃金を引き下げて経験者を雇用できる点が最大のメリットと
言えるでしょう。


再雇用される場合、そのほとんどが定年を境に賃金は下がります。

仮に60歳時の賃金の70%で再雇用されたとします。

この場合30%のダウンとなりますが、だからといって、その労働者の
保有する技術や知識が60歳を境に30%ダウンするわけではありません。

職務に精通して、会社の事情もよく理解した経験者を合法的に賃金を
下げて雇用することができるのです。


このように考え方によっては、高齢者をうまく戦力化することで、
企業の抱える諸問題を解決する手段にもなります。


では、雇用延長するととのデメリットとはどういうものでしょう。


身体的なもので言うと、視力・聴力の低下、記憶力・判断力の低下、
敏捷性・柔軟性の低下、持久力の低下、けがの発生率の上昇などがあります。

相手は高齢者ですから、年齢と共に気力・体力が衰えてくることは否めません。
個人の作業能力の差も大きくなってくるでしょう。


また、長年勤め上げてきた知識や経験があるがゆえに、だからこそ生じる
問題点もあります。

保守的で職務の変化を嫌う、新技術新知識の習得が困難、変化への対応力の欠如、
職種転換が困難などでしょうか。


単純に社員の若返りが図れない、ということもデメリットでしょう。


企業としてこれらデメリットを全部なくすことは不可能です。


ではどうすればよいか。


メリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑える。


これが最善の方法です。


そのためには、社内制度の見直しが必要になってくるはずです。

何の策もないままただ雇用を続けるのではなく高齢者の戦力化を戦略的に
考えて行くことが重要です。


シリーズ後半で触れますが、賃金制度、人事制度、勤務時間、勤務体系など
考えなければならないことは山ほど出てきます。


ただ、いきなり難しいことから始めるのはお勧めしません。


まずは簡単に始められることから先に着手していきましょう。

例えば健康維持や事故防止のために社内の安全・衛生面の見直しを行うこと、
また、きっちりと健康診断を受けさせること。

このあたりから始めればさほど抵抗はないはずです。


次回からは3つの選択肢の具体的な導入ポイントに触れていきますが、
まずは雇用延長の制度設計をする前に、自社にとっての阻害要因は何かを
整理してみてはいかがでしょうか。