前回、高齢者を雇うことのメリット・デメリットについてお話しましたが、
今回からは、3つの選択肢の具体的なメリット・デメリットに触れて行きます。


今回はまず初めに、定年引き上げの制度についてお話したいと思います。


この定年引上げの制度ですが、高年齢者雇用確保措置の3つの選択肢の第一に
挙げられています。


では、この制度を導入することが最良・最善の方法なのでしょうか。


まず、定年制とは、従業員が一定の年齢に達したときに労働契約が終了する制度
のことです。

よって定年を引き上げるということは、この「一定の年齢」を一律に引き上げる
ことになります。


それでは、企業にとって定年を引き上げるメリットとはどういうものでしょう。


まず第一に、経験を積んだ、熟練度の高い労働力を特段のことをしなくても
確保できることです。


一般的に勤続年数が長くなれば、その分経験が深まり、技能の習熟度が増すことに
なります。

企業側から見れば、定年の引き上げによって、こういった優秀な人材を確保できる
メリットがあります。


さらに、企業のイメージアップとしても大きなメリットがあります。

高齢者の雇用は今後の課題として社会的に十分認知されているものですし、
国も支援している取り組みです。

定年引き上げの制度を取り入れることは企業のPR効果も十分期待できます。


では、労働者にとってのメリットとはどういうものでしょう。


これはまさに、働く機会と場所を確保することができることです。


日本では、60歳を超えても引き続き働きたいと思っている人は多いようです。

ある調査結果を見ても、「何歳まで働きたいか」という問いに対し、
「60歳まで」と答えたのはごく少数で、「働けるうちはずっと」と答えた人が
約半数以上もいました。

この事実からも、定年の引上げはこの期待に応えられる制度と言えます。



次にデメリットについて考えてみましょう。


企業にとって最大のデメリットは、定年引き上げの対象者を選別できないことです。


定年を引き上げるということは、労働契約の終了を一律に引き上げることです。

つまり、従業員の雇用を無条件で延長させることになります。


これは非常に重要な部分です。


定年間近の従業員全員が、経験豊富で優れた技能を持ち、気力・体力ともに
十分な人達ばかりではありません。

そうすると、企業として、この人は引き続き雇用したいけど、この人には辞めてもらいたい、
という思いが必ず出てくるはずです。

定年の引き上げを行うことによって、これら様々な種類の従業員を選別することが
できなくなります。


最後に労働者にとってのデメリットを見て行きましょう。


定年が65歳に引き上がることによって、今よりも働ける期間が
5年間延長されることになります。

一見すると労働者に有利な選択肢のように思われます。


本当にそうでしょうか?


先ほど「働けるうちはずっと働きたい」と答えて人が半数以上いた、という
お話をしました。

こう答えた人が全て、「同じ会社で」「同じ職務を」「同じ条件で」働きたい
と望んでいるわけではないということです。

彼らは、自分の生活設計に見合った高齢期の働き方を望むのがホンネで、
定年の延長がその望みを全て叶えてくれるとは必ずしも考えていないようです。


定年が延びたことでモチベーションが下がった。

定年退職後の第2の人生を楽しみにしていたのに。


こう思っている人がいるのも事実です。


人生観やライフプランが多様化する現代社会では、必ずしも定年年齢が
引き上げられることが喜ばしいとは限りません。

また、5年間分の人件費を考えると、企業にとっても負担が大きい選択肢です。

安易に採用することは避け、労使ともによく考え、話し合ったうえでの導入が
賢明といえるでしょう。