前回、3つの選択肢のうち、定年引き上げの制度についてお話ししました。


いろいろなメリット・デメリットがありましたが、実際にご自分の会社と
照らし合わせていかがでしたでしょうか。


さて今回ですが、2つ目の選択肢の継続雇用制度ではなく、
あえて3つ目の定年廃止について考えていきたいと思います。


定年の廃止とは、その名のとおり定年制自体をなくしてしまう方法です。

いっそ定年自体をなくしてしまえば、雇用延長の対策をとる必要がなくなるのではないか、
と考える経営者もいるようですが果たしてそうでしょうか。


定年の廃止とは、原則としてすべての高齢者が、希望すれば年齢に関係なく
いつまでも働き続けられるということです。

これが労働者側のメリットと考えるなら、企業側のメリットは優れた能力と
知識を有している高齢者をいつまでも活用することができることでしょうか。


単純明快な制度です。


しかし、日本ではあまりメジャーな制度ではありません。

日本国内で、定年を定めていない企業は全体の1%にも満たないでしょう。


なぜ浸透しないのか。


それはあまりにも弊害(デメリット)が大きいからです。


定年の廃止は、いつまでも勤務ができるということで、人事の停滞を招き、
事業活動の活性化が損なわれる恐れがあります。

企業の職場環境は、電子化やパソコンの普及などで大きく変化しています。

この変化に対応できれば問題ありませんが、教育訓練にも限界がありますから
変化に対応できないとなると、企業経営にマイナスになることも考えられます。


5年前に定年を廃止していた日本マクドナルド鰍焉A今年の1月から
定年制度を復活させました。


理由として以下の弊害が出たためです。

◇定年制度が無くなり後進を育成する意識が薄れた

◇業務のノウハウや情報の継承が後回しになった

◇経理や法務の案件処理の引き継ぎが上手く行かないケースが生じた

◇店舗ノウハウが引き継がれなくなった

◇新しい分野へのチャレンジに社員が消極的になる傾向が見られた


「終わりがない」ことが、人を育てる義務感や、自分を成長させる意欲を
失わせることにも繋がり得るということが如実に表れた例ではないでしょうか。



また、退職についてもいろいろと制約が出てきます。


高齢者に退職を求めたい場合、本人が退職に合意すれば問題ありませんが、
本人に退職の意思がない場合は解雇の手続きが必要となります。

現在、労働基準法では解雇に関して、解雇権の濫用をしないよう厳しく企業に
求めています。

解雇ができないということではありませんが、過去の判例から見ても、
本人の責めに帰すべき事由以外の解雇は、解雇の必要性や対象者選定の合理性など
厳しく要件が問われます。


逆に言うと、解雇の理由や必要性がはっきりしている場合は企業はいつでも
労働者を解雇できることになります。


これは、定年制がある場合とない場合とでは大きく取り扱いが変わってくるのでは
ないでしょうか。

企業が倒産したり、労働者に解雇に該当するような事情があれば別ですが、
通常は普通に働いていれば定年まで雇用は保障されています。

私の経験からも、50代、60代で解雇される割合は、若者が解雇される割合に比べて
非常に低いように思います。


もちろん、事情によって解雇される人はいますが、もし定年制がなくなれば、
雇用保障の終わりがなくなるわけですから、高齢者に対する解雇が今よりもっと
多くなるはずです。


定年制の廃止は、いつまでも長く会社に勤務できる制度のように見えますが、
同時に年齢に関係なく雇用が保障されなくなる制度にもなり得ます。

運用次第では、他の制度に比べて、より厳しい制度ともなり得ますので、
導入には十分な検討が必要です。