2012年03月01日
前回は新入社員採用時の準備についてお話をしました。
今回は採用が決定した後、会社がおこなう手続きについてお話しましょう。
従業員を採用した場合、各種の手続きがあります。具体的には
1.労働基準法の手続き
2.雇用保険の手続き
3.社会保険の手続き
4.税法の手続き
ということになります。これを順番にみていきますとまず、
【労働基準法の手続き】
労働契約の締結に際し明示しなければならない事項には、必ず明示しなければならない事項
(絶対的明示事項)と、定めをする場合には明示しなければならない事項(相対的明示事項)
があります。
(絶対的明示事項)
@ 労働契約の期間
A 就業の場所、従事すべき業務
B 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間・休日・休暇、
交替勤務に関する事項
C 賃金(退職金、賞与等を除く)の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切・支払の
時期、昇給に関する事項
D 退職に関する事項
退職に関する事項は、退職の事由及び手続、解雇の事由等を明示しなければなりません。
しかし、明示すべき内容が膨大になる場合には、就業規則を示すことで足ります。
また、退職には、退職手当に関する事項は含みません。
(相対的明示事項)
@ 退職手当の定めをする場合は、労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払いの
方法及び支払の時期に関する事項
A 臨時の賃金等及び最低賃金額の定めをする場合は、これらに関する事項
B 労働者に食事、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、これに関する
事項
C 安全及び衛生に関する定めをする場合は、これに関する事項
D 職業訓練に関する定めをする場合は、これに関する事項
E 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合は、これに関する事項
F 表彰及び制裁の定めをする場合は、種類及び程度に関する事項
G 休職に関する事項
(書面の交付により明示しなければならない事項)
@ 労働契約の期間
A 就業の場所、従事すべき業務
B 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間・休日・休暇、交替
勤務に関する事項
C 賃金(退職金、賞与等を除く)の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切・支払の時期
に関する事項
D 退職に関する事項
書面により明示しなければならない事項は絶対的明示事項と全く同じように思えますが、
昇給に関する事項については書面交付の必要はありません。
労働契約の締結は口頭で行なうのではなく、必ず書面にて交付し会社と労働者でそれぞれ一部
ずつ保管するようにしましょう。
【雇用保険の手続き】
従業員を採用した場合、雇用保険の被保険者となります。
パート、アルバイトの場合は週所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上雇用されることが
条件となります。
@ 雇用保険被保険者資格取得届を事業所管轄のハローワークに提出
(被保険者となった翌月10日までに)
【社会保険の手続き】
従業員を採用した場合、社会保険(健康保険・厚生年金)の取得手続きも必要です。
パート、アルバイトの場合は次の両方に当てはまる人が被保険者となります。
1. 1日の所定労働時間が正社員の4分の3以上
2. 1週間の所定労働時間数が正社員の4分の3以上
@ 資格取得届を管轄の年金事務所に提出(採用後5日以内)
A 健康保険被扶養異動届(採用した従業員に被扶養者がいる場合 ※年間収入が130万円未満、
60歳以上の場合は180万円未満)(資格取得届と同時に提出)
B 国民年金第3号被保険者資格取得届(年金事務所に、採用した日から14日以内に提出)
【所得税法の手続き】
「給与所得者の扶養控除申告書」を本人より提出してもらう必要があります。
これは所得税法上の扶養親族を記載する書類であり、一般的にはその年の年末調整の際にも
使用するものなので12月になってから提出を求める会社が多く見受けられますが、
本来は入社時に提出が必要ですので注意してください。
【住民税の手続き】
転職などの場合、直前に働いていた会社の住民税が未徴収となっている場合は、
本人が会社の給与から天引きを希望した場合、普通徴収(本人が納付)から特別徴収
(会社が納付)への切り替えの連絡を管轄の市区町村におこなう必要があります。
これにより市区町村より会社あてに納付書が届きます。
以上のような手続きが必要となってきます。従業員の採用というのはいろいろと手続きや
作成書類が必要ですが面倒だからと後回しにしてしまうと、会社との信頼関係に齟齬が生じる
ことになりますので、注意してください。
最後によくご相談をいただくケースについてお話しますと、
「正社員採用後、正規採用できるか見極めるために2ヶ月間の契約期間を設けてその後に
正社員として新たに契約と社会保険の加入手続きをしていますが、特に問題ないでしょうか?」
という質問を受けることがあります。
2ヶ月以内の短期契約期間の場合、健康保険・厚生年金に加入させる必要はありませんが、
これはあくまでも2ヶ月を超えて雇用される見込みがない場合の話となります。
特に問題がなく、2ヶ月経過後も雇用することが前提であれば、最初の契約期間が2ヶ月以内
であっても、入社当初から加入させる必要があります。