以前、育児休業中の社員がいる会社の総務担当者から
こんな相談を受けたことがあります。

『復帰予定の社員をパートとして復帰させる、
もしくは本人が拒否したら退職してもらうことは問題があるか?』
といものです。

残念ながら問い合わせの件のような対応をすることは
不利益変更に該当し、裁判となれば無効とされるでしょう。

近年の育児休業取得者の増加とともに、
育児休業から復帰後の配置転換等に伴う不利益変更については
しばしば問題となっています。

この不利益変更ですが
コナミデジタルエンタテインメント事件において
興味深い判例がでています。
(平成23年12月:東京高裁判決)


本件は、育児休業後に復職した女性社員の担当業務の変更に伴う
年俸の減額措置が争点となった事案です。

高裁は就業規則等に明示的な根拠もなく、
個別の同意もないまま年俸を減額したことは
人事権の濫用にあたり無効とし、賃金差額と慰謝料等
合計95万円の支払いを会社に命じています。


この判例の主なポイントは次のとおりです。

●担当業務の変更は業務上の必要性に基づいたもので合理性あり

●重要な労働条件である賃金額の不利益変更は
就業規則等に明示的な根拠が必要

●個別の同意もないまま一方的に引き下げたことは人事権の濫用


業務担当の変更が不利益変更に該当するかどうかは
業務上の必要性や、配置転換前後の賃金その他の労働条件、
通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について
総合的に比較考量して判断されます。

採用時に担当業務を限定して雇用契約を締結していたり、
就業規則に現職復帰を約束している、といった事情が無ければ
配置については使用者である会社に裁量権があります。

この配置転換については1審、および2審(本判例)いずれも
合理性ありとの判断でしたが、
年俸の減額は1審では違法ではないとしたものの、
2審(本判例)では就業規則等への明示や個別の同意が無い事から
人事権の濫用という判断となりました。



育児休業から復帰する場合、時短勤務を希望する社員は多く、
その為に原職への復帰が困難となり
担当業務を変更せざるを得ないケースがあります。

本判例においても原告は
時短勤務を希望したことによる担当業務の変更でした。

本判例から育児休業規程に(復職後の勤務)を記載する場合は、
担当業務の変更等の可能性や、
変更の場合は処遇を見直しすることがある、
といった内容をしっかり明記しておく必要がありますね。
(お手持ちの規程があれば是非ご確認ください)



さて、最初の質問に戻りますが、
復帰予定の社員をパートとして復帰させる
という事を本人に打診すること自体は不当ではありません。
しかし、トラブルになった場合、
「労働者の真意に基づくもの」であることを立証することは
非常に困難ですし、
打診することで会社に対する不信感やモチベーションの低下を
招く恐れがあります。
丁寧なコミュニケーションと
労働者の意思を十分に尊重するように留意してください。



※育児介護休業法の指針
『原則として原職又は原職相当職に復帰させることが
多く行われているものであることに配慮すること』
(平成16年 第3647号)