複数人による複数回の面接を行い、それぞれの評価を全て残らずテーブルに上げて
検討してみることが大切だというのが前回のお話でした。
さて今回は少し視点を変えて実際の面接現場で起こった失敗事例をひとつ見てみましょう。

「いい人を知ってるよ」

なんとかして優秀な人材を採用しようと四苦八苦している時に、
そっと小耳でそんなことを囁かれたら…とりあえず話だけでも
聞いてみようかという気になりませんか?


取引先からの紹介、あるいは知人からの紹介。
信頼できる人からの推薦であれば、入社後に問題となる人が比較的少なかったり、
会社の情報や社風が相手に正しく伝わりやすいといったメリットがあります。
ところがその一方でその信頼が裏目に出てしまうことも珍しくありません。

実際にある会社で起こったケースを紹介します。

製造業(30名)の総務課に勤めていた女性が妊娠し、急遽退職することになりました。
こうした理由で急に欠員が出てしまうことは現実にはよくあることです。
総務課の中でも補助的な仕事をしていたとはいえ、それでも彼女に抜けられると
仕事が回らなくなりますので急いで次の人を探すことになりました。

そんな時、退職する女性社員が社長に対して「私の代わりとして、
いい人を知ってるのでどうでしょうか」とAさんを紹介してきたのです。

この会社はこれまで求人広告はインターネットの求人サイトへ依頼することが多く、
採用の度に多くの費用を業者に支払っていたこともあり、
コストをかけずに良い人材に来てもらえるならと、その話に乗り気になります。

とはいえ社長が乗り気になったのには他にも理由があり、
ひとつはそのAさんが退職する方と同じような年齢で業種は違うものの
メーカーで長く総務部に勤めていたということ。
そして退職する女性社員は細かなところまで気配りができ、
正確に仕事をこなせる方だったので彼女の紹介する人であれば多分大丈夫だろうと考えたこと。
更にはその女性社員の退職日が迫りつつあるのに、
求人広告を出した求人サイトからの反応があまり良くないこと。

というわけで、社長はほとんど形式だけの面接を済ませ、Aさんの採用を決定しました。

入社後Aさんは退職予定の女性社員との1ヶ月にわたる引き継ぎを順調にこなし、
そして前任者は退職。ところがそこからが問題となります。

引き継ぎ期間は二人で作業をしていたため表面化しませんでしたが、
Aさん一人になってみると仕事が全く進まなくなってしまったのです。
最初のうちはまだ新しい職場で慣れていないからだろうと周りも見ていたのですが、
3ヶ月、半年経ってもミスは多いし段取りも悪く、総務の仕事が目に見えて滞ってきたのです。
前任者の紹介だからと、最初のうちは周囲も優しい目で見守っていたのですが、
やはり限度があります。周囲の業務にも支障を及ぼすようになるにつれ、
直属の上司にクレームが集中するようになったのです。

ある時、上司が前任者に電話をすることがあり、Aさんについて話を聞くと、
実はAさんとはプライベートでは仲が良いものの実際に一緒に仕事をした経験は無い
ということでした。
それを聞いて上司と社長は形式的な面接しかせず安易にAさんを採用したことを
後悔しましたがもはや後の祭りです。その後も周囲が懸命にサポートしましたが
Aさんの能力は向上せず、やがて本人も居づらくなったのか入社1年で自ら退職していき、
また新たな人材を採用(つまり最初からスタート)することになったのです。


いくら紹介であってもしかるべき手順を踏んでしっかりと面接で見極めることが
重要だということがよく分かる事例です。
また、紹介だけだと「この人を採用しなければまた一から候補を探さないといけない」
との思いから人を見る目が甘くなりがちですので、同時に一般募集も実施して
他の候補者とも比較した方が良いでしょう。

前回もお伝えしましたが、採用にはコストを惜しむと良い結果は期待できません。
時間はかけるもの、手間はかけるものとして強く再認識してください。


次回は、採用面接で本当に大切なことは何かを「価値観」をキーワードにお伝えしたいと思います。