《K新聞子会社A事件》
(京都地裁判決平成21年4月20日)

今回は、契約社員等有期雇用契約の終了、いわゆる「雇止め」に関する判例を
紹介致します。

(概  略)
被告:K新聞子会社A(以下A)
原告:契約社員2名(以下B・C)

Aは、K新聞社の100%出資子会社です。
原告であるBCは、K新聞の別の子会社に、Bは平成13年6月1日に、Cは平成16年
6月5日に、それぞれ契約社員として採用されました。
その後、雇用契約は更新されておりましたが、K新聞社の事業再編に伴い、
平成18年2月24日付で被告であるAと雇用契約を締結しました。

Aにおいても、雇用契約を両名2度更新しておりましたが、Aは有期雇用契約の
上限を3年と定めて、その上限にあたる平成21年3月31日をもって、BCらの雇用
契約は終了したものとして雇止めとする旨の通知を行いました。
これに対しBCは不服とし、平成21年4月1日以降の地位保全と賃金の仮払いを求め
仮処分の申し立てを行ったというものです。


(判決要旨)
判決では、
【1】〈雇用契約・就業規則〉
 1.Aにおいて雇用契約書は毎年作成されていたが、雇用期間の上限に関して
   一切記載がなかったこと
 2.当初BCが採用されたK新聞別子会社では、就業規則にも雇用期間の上限に
   関する定めはなかったこと
 3.その他、A及びK新聞別子会社がBCに対し、雇用契約期間を3年を上限とする
   ルールについて説明したと認められる資料が無いこと

以上3点から、BCが3年ルールを知った上で、納得していたとは認められないと
判断されました。

【2】〈雇用期間の実績・継続性について〉
 1.Bについて、K新聞別子会社で平成16年4月1日の契約更新により、同年
   6月1日に雇用期間が3年を超えることとなったが、Bは同年1月、2月から
   新たな企画の準備を始め、同年3月から12月までこの業務を遂行した。
   その後Aに移った平成17年から18年にかけても同様の業務を担当していた。
 2.Cについて、平成16年から17年にかけて業務を担当し、Aに移った平成17年
   から18年にかけても同様の業務を担当した。
 3.Bの年次有給休暇について、移籍前後を問わず2日ずつ増えており、Aへの
   移籍後、平成18年度は16日、19年度は18日、20年度は20日付与されており、
   Aの契約社員に対する有給日数の定めとも乖離していた。

上記3点から、BCについて雇用契約が期限の定めの無いものに転化したかどうか
を判断するまでもなく、雇用継続に対する正当な期待があったと判断されました。


上記【1】【2】の判断により、本件雇止めは、客観的合理的理由を欠き社会的
相当性のないものとして無効であるといわざるを得ず、平成21年4月1日時点で
雇用契約が更新され現在まで継続しているというべきであるとの判決となりました。

本判決では、移籍前の勤務実態も重視し、雇用の連続性について母体である
K新聞社の支配の及ぶ広い意味でのグループ内において、雇用契約について
その実情を踏まえ判断したケースです。


近年では、平成16年の労働基準法改正で「有期労働契約の締結、更新及び雇止め
に関する基準」が定められ、又、平成20年3月には「労働契約法」が施行された
ことにより、有期の労働契約に関する厳格な取り扱いが求められております。
その他、パートタイム労働法の改正も平成20年4月1日に施行されており、
契約社員やアルバイト等臨時雇用者に対する労働条件設定や雇用契約の締結、
更新について曖昧な取り扱いを行うと、後々、企業にとって不利な状況となって
しまう恐れが多分にあります。

採用する人材に対して「どのように働いてほしいか」「なにを期待するのか」
「どれぐらいのスパンでの勤務を望むのか」を明確にイメージしていただき、
それに沿って、適切な労働条件設定と就業規則、雇用契約書の作成、運用を
行っていただきたいと考えます。

今回で本シリーズ11回目となり、後1回を残すのみとなりました。
残り1回についても、少しでもご覧になっていただいている皆様にとって有用な
情報を発信できるようがんばってまいります。