《丸山宝飾事件》
(東京地裁判決平成6年9月7日)

今回は、従業員の重大な過失により会社が被った損害について、従業員及び
身元保証人に対して損害賠償を請求したという判例を紹介いたします。
この事件の概略は次のとおりです。

(概  略)
原告:丸山宝飾(以下:原告)
被告:従業員A(以下:被告A)及び身元保証人である両親(以下:被告B、被告C)

貴金属宝石類販売業である原告の営業担当として勤務していたAが、営業のため
訪問した宝石店で伝票を作成中、一時鞄から離れていた(4m程度)際に、
同鞄を盗まれた。そのことについて原告は、被告A及び身元保証人であった被告B、
被告Cに対して損害賠償の請求を行ったというものです。


(判決要旨)
判決では、
【1】〈被告Aの責任の範囲について〉
1.被告Aの重過失はあったが、本件は第三者の窃盗という犯罪行為によって
  引き起こされた被害であること。
2.被告Aの日常の勤務態度はなんら問題がないこと。
3.原告は、営業担当が持ち歩く貴金属宝石類について盗難保険に入っていなかったこと。
4.被告Aは自動車以外の格別な資産を有していないこと。

上記の観点から、原告が被告Aに対して請求できる損害賠償の範囲を損害額の
半分とする。それ以上の請求はできないと解すべきであるとされました。

【2】〈身元保証人の責任の範囲について〉
1.被告B、被告Cは身元保証人となる際、被告Aから宝石店の営業社員となる
  ことは話として聞いていた。
2.被告Bは月収30万円程度、被告Cは月収20万円程度しかなく、
  その他不動産等の資産は何も有していないこと。
3.原告は身元保証書を徴収していたが、身元保証人の資産状況の調査や
  保証意思について直接的に確認していたと判断できる証拠がないこと。

上記の観点から、被告B、被告Cがそれぞれ身元保証人として被告Aと連帯して
負担すべき損害賠償の範囲は、被告Aが負担すべき損害賠償額の4割とされました。


今回の事案は、身元保証人にどの程度まで保証を求めることが出来るか
ということを検討する上での一つとしてご紹介致しました。
身元保証人にどれだけの保証を求められるかについては、企業の従業員監督に
関する過失の有無とその度合い、身元保証人が保証をするに至った理由、
身元保証人が保証するときに用いた注意の程度、従業員の担当業務の変化、
その他ケースバイケースによりその事情を総合的に判断されることとなります。

どちらにしましても、従業員の担当する業務やそのリスクを検討し、身元保証人
の設定が必要と判断される場合は、社内規則としてその運用を規定されることを
お勧め致します。
又、身元保証契約について、契約当初から従業員の担当業務やポジションが
配置転換により変更となりそのリスクが変化した場合は、その旨を身元保証人
に通知する義務もあり、契約だけで安心せず、継続的に運用を続けていただく
ことをお勧め致します。