企業の人事担当者から、外国人労働者のメンタルヘルスについて寄せられる
相談件数が年々増えてきています。いずれのケースにおいても、彼らの
おかれた状況を理解してあげて、精神的不調が発生する前の「事前ケア」を
行うことが重要となってきます。

よくミスをする、やる気がない、心ここにあらず、注意力が散漫でいつ怪我をしても
おかしくない、一人で何でもやろうとして失敗する、最近言動が変わってきた、
うつむきがちで独り言が増えた、ヒステリック又は凶暴になった・・・等々、
様々な相談事例があります。


母国から日本に来た当初は、期待と不安が入り混じった興奮状態にあったとしても、
本人らにとって見るもの聞くもの全てが新鮮で、周囲の方々も歓迎ムードが
暫く続くこともあり、お互いに精神的な安定は保てるものです。
また「異文化」での生活は刺激的ですので、相互理解への協力体制が続く間は、
意外と精神的不安定状態には陥らないのが一般的です。

そんな満足感や新鮮さも月日が経つにつれ変化してきます。遠い異国の地では
ホームシックにもなり、理想とは異なる現実で多忙な仕事をしていくと、
後輩・同僚や上司との間でのちょっとした思い違いや、日本語の難しさという
要因もあって、自分の知らないところで恣意的な事が行われているのではないか
という勘違いストレス等につながり、それが徐々に増幅したり、生活面においても
「食生活」の違いという大きなストレスが加担し、「気にかけてくれていない」
ことを「知らぬ間に」自分自身で思い悩みはじめると、心身ともに滅入ってくる
ようになるケースが多いようです。
過度な長時間労働が心身に与える悪影響は言うまでもないですが、日本に
来た以上は人の倍以上頑張るという方が多く、母国に残した家族のことを思うと
一層頑張ってしまう方の割合が非常に高いのも原因となっているのでしょうか。

これまでの母国での経験で身に付けたストレス対処法でうまく解消できない日々が続き、
自分の心的改善効果がないと知らぬ間にさらに焦燥感にかられ、結果的に頻繁に
未達成感を感じるようになり、虚脱感や吐き気・めまい・食欲不振・不眠などの
症状が出てきて、それがひどくなってくると、相談する相手がいても、アドバイスを
聞いても、自分の力だけではどうしようもない状態になってくるのでしょう。


あれっ少し顔色が悪いとか、声が小さくなった、団体行動を避けるようになった、
落ち着きがなくなった、ミスが増えてきた、体調不良で休みがち等の前兆、
つまり「今までと何か違う・いつもとなにかが違う」というサインに気付いたときは、
やたらと励ますのではなく、なるべく同じ目線にたって話を聞いてあげ、問題を
一緒に解決する姿勢を見せ、上長・上司とも相談して組織として対応にあたることが、
初動で必要なことではないかと考えます。

誰もが自身の心の強さで解決できるという過信はしないように、対応する側も、
あくまで世間一般の大人であれば有している、相手の立場に立った「常識」から考えて
接していくことが、周りにいる人ができる「事前ケア」と言えるのかもしれません。