《東朋学園事件》
(最高裁判決平成15年12月4日)

今回は機会均等関連として、産後休業及び育児短時間勤務者に対する賞与
不支給の可否についての判例を紹介致します。

(概  略)
上告人 :学園A
被上告人:個人1名(以下B)

Bは学園Aに昭和62年3月から事務職の正社員として採用されました。
Bは平成6年7月に子を出産し、8週間の産後休業を取得し、その後同年10月から
翌年の7月までの間、1日につき1時間15分の勤務時間短縮措置を受けました。
学園Aの就業規則上、賞与の支給条件に関し、支給対象期間に係る出勤率が
90%以上ある者に対して賞与を支給するとの定めがありました。(以下90%条項)

学園AはBに対し、8週間の産後休業を取得した日と勤務時間短縮措置により
短縮した時間について、欠勤として判断し、出勤率が90%未満の支給対象外
であると決定し、平成6年度末賞与及び平成7年夏季賞与を支給しませんでした。
その事について、Bは不当であるとして2回分の賞与と慰謝料の支払いを求めた
というものです。

第一審では、Bの請求を一部認め、2回分の賞与支給額の支払を命じました。
第二審では、第一審を不服とし学園Aが控訴しましたが、第二審もほぼ同様の
判断にて控訴を棄却しました。それに伴い、学園Aが上告したというものでした。

(判決要旨)
判決では、

【1】<賞与支給判定に伴う出勤率の算出について>

1.本件での90%条項については、単に産後休業及び勤務時間短縮措置により
  労務の提供がされなかった部分に対応する賞与の減額を行うだけに留まらず、
  一切賞与が支給されないという不利益を被らせるものであること

2.学園Aでは、従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が相当大きく、
  賞与が支給されない者の受ける経済的不利益が大きいこと

3.本件90%条項において基準とされている90%という出勤率の数値が、従業員が
  産前産後休業を取得し、又は勤務時間短縮措置を受けた場合に、それだけで
  同条項に該当し賞与の支給を受けられなくなる可能性が高い為、勤務を継続
  しながら出産し、又は育児のために勤務時間短縮措置を請求することを差し控え
  ようとする機運を生じさせるものと考えられ、上記権利の行使に対する抑止力が
  非常につよいとみるのが相当であること

上記の観点から、出勤率の算出において産前産後の休業の日数及び勤務時間
短縮措置の時間数を含めないとしている部分に関しては、公序に反し無効である。

【2】<賞与支給額の判定について>

1.本件90%条項のうち、出勤率の算出においては、産前産後休業及び勤務時間
  短縮措置の期間を含めないことは無効ではあるが、賞与額の計算式の適用に
  あたっては、本件各回覧文書の定めにより、上記期間について欠勤として
  減額の対象とすること自体は有効

2.各回覧文書に定める各計算式は、賞与の額を一定の範囲内でその欠勤日数に
  応じ減額することに留まるものであり、産前産後休業及び勤務時間短縮措置
  を受けた労働者は法律上、同期間に対する賃金請求権を有しておらず、就業
  規則上も無給と定められている

上記の観点から賞与支給額の計算式については、直ちに公序に反し無効なものと
いうことはできない。

上記【1】【2】の判断により、原審が賞与額の各計算式を適用せず、学園Aの本件
各賞与全額の支払義務を肯定した判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな
法令の違反があるとして、学園Aの敗訴部分の破棄及び差し戻しを命じました。


近年では、度重なる育児介護休業法及び男女雇用機会均等法の改正により
女性の出産・育児に関する保護規定が手厚くなっております。
ただ、その中でもノーワーク・ノーペイの原則は適用されますので、労働者に対し
権利として付与する部分と、その必要の無い部分を明確に区分し、社内制度を
構築、改定されていくことをお勧め致します。