《日本ファースト証券事件》
(大阪地裁判決平成20年2月8日)

今回は、時間外手当に関して管理監督者かどうかの判断が争点となり、管理監督者である
と認められた判例を紹介致します。この事件の概略は次のとおりです。

(概  略)
原告:支店長A
被告:日本ファースト証券株式会社

原告は、平成16年2月に大阪支店長として被告に入社し、平成17年6月に退社しました。
被告に在籍中、いわゆる労働基準法上の「管理監督者」として扱われていました。
それに対し原告は、大阪支店長とは名ばかりで、経営方針の設定や社員の採否・
昇降格・配置等の人事労務管理の権限を持っておらず、管理監督者にはほど遠く、
何ら権限の無い立場であったと主張し、被告に対し土曜日・祝日の出勤に対する
時間外割増賃金の支払いを求めたというものです。

(判決要旨)
判決では、
【1】《職制上の地位》
 1.原告は、被告の役員及び社員349人中15位前後の位置の職責を与えられており、
   高い地位にあったこと
 2.大阪支店長として33名の部下を統括する地位にあったこと
【2】《職務内容と権限》
 1.大阪支店の経営方針を定め、部下を指導監督する権限を有していたこと
 2.中途採用者の採否について実質的に決定する権限を有していたこと
 3.係長以下の人事について、原告の裁量で決定することができ、昇格・降格に
   ついて相当な影響力をもっていたこと
 4.昇格基準を満たす社員の具体的な昇給額を決定する権限を有していたこと
 5.月1回の責任者会議に出席する立場にあったこと
【3】《労働条件》
 1.原告の出退勤の有無や労働時間は被告に対する報告・管理の対象外であったこと
 2.月25万円の職責手当を支給されていたこと
 3.賃金総額で月82万円支給されており、店長以下の支給額と比べ格段に高額であったこと

上記の事実から、原告は労働の決定、その他労務管理について経営者と一体的な
立場にある管理監督者にあたるとし、被告の主張を認め、原告の請求を棄却した。

(注目点)
最近では「名ばかり管理職」という言葉ができるほど管理職の問題が注目を集めています。
特にマクドナルド事件はその大きな基点となったのではないかと考えています。
管理職を「管理監督者」と位置づけ取扱を行う際は細心の注意を払い、実質的な社内の
ポジションや権限その管理職に対する賃金の設定を総合的にご判断いただきたいと思います。

ただ、この判決のように明らかにポジション、権限、賃金が管理監督者に適合すると
判断される場合は、それを適用することも可能であることが本裁判で証明されており、
数少ない裁判例ですので今回取り上げることと致しました。
皆様の社内の管理体制をもう一度ご確認いただき、「役職者」と「管理監督者」が
無判断にイコールとなっていないかをチェックし、今後の社内体制や労働条件の改定に
活かしていただければと思います。