《スギヤマ薬品(過労死)事件》
(名古屋地裁判決平成19年10月5日)

今回は長時間労働を原因とする過労死に関する判例を紹介致します。
この事件の簡単な概略は次のとおりです。

(概  略)
被告:株式会社スギヤマ薬品
原告:遺族2名

死亡した社員(以後「T」とします。)は、平成12年3月に被告に入社し、
薬剤師として勤務していましたが、平成13年6月7日(入社後1年2ヶ月)に
当時24歳という若さで、致死性不整脈の発症、心停止により急死しました。
このことについて原告が、Tが死亡した原因は被告に長時間の過重労働を
強いられた為死亡に至ったとして、被告に対し安全配慮義務違反を理由として、
損害賠償を請求したというものです。
本件について、平成16年には既に労働基準監督署長はTの死亡は業務に
起因する災害であることを認め、労災が認定されていました。

(判決要旨)
判決では、
[1]Tの死亡について

1.死亡1ヶ月前の平成13年5月8日〜6月6日までの期間について
   拘束時間  :338時間11分
   労働時間  :310時間11分
   時間外労働:138時間46分
  という非常に長時間の勤務が発生しており、著しく過重労働であったこと
2.平成13年5月8日〜6月6日までの期間中、休みが2日しかなかったこと
3.平成12年10月16日以降、店舗に勤務する唯一の薬剤師となり、管理薬剤師として
  責任のある立場で勤務し、業務内容から精神的に負荷のかかる状態となっていたこと
4.平成13年5月21日以降、人員配置の変更により、店長代行業務も一部担当する
  こととなり、入社後1年余りと、経験が十分とはいえない状態で店長不在時には
  責任者としての役割を求められ、精神的負荷が更に増大したこと

上記4点を主な理由として、Tの死亡と過重業務との因果関係は非常に強い。

[2]被告の安全配慮義務違反について

1.適切な労働条件を確保するという使用者としての義務をはたしていないこと
2.同店で勤務する店長を通じ、このような過重労働が発生していることを十分に
  認識できたはずであり、過重労働による疲労やストレスの蓄積により、労働者
の心身の健康が損なわれる危険があることは周知のとおりであることから、
  被告はTの死亡について予見することが可能であったこと。

上記2点を主な理由とし、被告は安全配慮義務に違反しており、債務不履行責任を負う。

上記1.2の判断により、Tの死亡について業務起因性、被告の安全配慮義務違反
を認め、被告に損害賠償等の支払いを命じました。

(注目点)
この判決で注目される点は、長時間労働や精神的負荷の高い業務と労働者の
心身の健康障害との因果関係について周知の事実であることを認め、会社には
労働者の勤務状況や労働者の健康状態を把握し、先を予見して対策を立てる義務
があり、又、健康障害が発生しないよう管理することを求めている点です。

労働者安全衛生法での長時間労働者に対する健康管理の義務化や、長時間労働に
よる心身の疾患や死亡についての労災認定基準の緩和、最近では、労働基準法の
改正により月間60時間以上の時間外労働に対する割増賃金の割増率の引き上げ等、
労働者の長時間労働発生に対する使用者としての責任や義務は増大しております。

ですので、適正な労働時間管理や長時間労働抑制に向けた対策の策定について、
今一度ご確認いただき、必要な部分について改善していかれることをお勧めいたします。