《ネスレジャパンホールディングス(配置転換)事件》
 (神戸地裁姫路支部判決平成17年5月9日)

 今回は配置転換の有効無効に関する判例を紹介致します。
 この事件の簡単な概略は次のとおりです。

〔概 略〕
  
被告:ネスレホールディングス株式会社
原告:同社従業員2名(原告A・原告B)

原告A・原告Bは被告の姫路工場(兵庫県)に現地採用者で、同工場の製造課
充填包装課ギフトボックス係として勤務していました。
会社は、平成15年5月9日に原告A・原告Bが配属されていたギフトボックス係を
廃止することを決定し、同係で勤務していた従業員に霞ヶ浦工場(三重県)に
転勤するか退職するかを選択するよう通知しました。
原告Aは病気を患っている妻を抱え生活上の補助を行う必要があり、
原告Bは要介護状態にある実母の介護を妻と交代で行っているという状況から
転勤が出来ないことを理由に、数度にわたり被告に対し姫路工場で勤務を続けたい
との希望を申し出ましたが認められなかったため、転勤命令の効力停止等の
仮処分を申請したというものです。


〔判決要旨〕

判決では、被告が原告らを霞ヶ浦工場へ配置転換しようとしたことには、
 1.就業規則、雇用契約書により、被告が配置転換命令を行う権限を有している
 2.経営合理化のため人員の異動必要であったこと
上記2点から経営上必要な措置であったことは認めるものの、
育児・介護休業法第26条に該当する従業員について、被告は配置転換において
その事情を「配慮」する義務がある。

原告Aは病気の妻を抱え実母も高齢であり、原告Bは実母が要介護状態であるため
転勤すること自体が困難且つ、転勤した場合に家族の状況が悪化する可能性がある。
そのことについて被告が充分な配慮を行ったとは言い難く、原告A・原告Bが本件
配置転換命令によって受ける不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えていることから、
権利の濫用により無効であるとしました。

〔注目点〕

この判決で注目される点は、労働契約により配置転換が可能として雇用した労働者
に対して、経営上の合理的な必要性から配置転換命令を出す場合であっても、
労働者が子の養育や家族の介護を行っている場合はその事情を「配慮」し、出来るだけ
この養育や家族の介護と仕事を両立できるよう、会社は措置をとるよう求めた点です。


配置転換・転勤を行う際には、従業員の能力・適正・勤務状態だけでなく
その家族状況についても、事前に確認し、総合的に判断することが求められて
おりますので、配転に伴う人選の際はご注意くださいませ。


参考条文《育児・介護休業法 第26条》
「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしよう
とする場合において、その就業の場所の変更により、就業しつつその子の養育
又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、
当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」