今回は、雇用契約の内容を語る上で最も重要な要素の一つである「労働時間」について
取り上げてみたいと思います。

第1回でもお話しましたが、雇用契約とは「当事者の一方が相手方に対して
労働する事を約束し、その対価として報酬を支払う事を約束すること」でした。


では何を計算根拠として、その労働の対価である報酬を支払うのでしょうか?


重さを量るにも、長さを測るにも一定の基準が必要です。
同様に、労働の対価として報酬を計算し支払う上でも基準となる単位が必要です。

それが「労働時間」です。
相手方のある取引には必ず共通したルールが必要なのです。


そこで、そもそも「労働時間」とはどのような時間なのでしょうか?


実は、(実に不思議なことですが)労働基準法や民法はじめ、労働時間そのものを
定義した条文は無いのです。(雇用契約はきちんと定義されていますが。)

ですので、当然のことながら過去にこの「労働時間」の定義をめぐり、
様々な疑義が生じ多くの裁判が行われました。
その中の一つに「三菱重工業長崎造船所」事件があり、そこで一定の決着が着いた
と言われています。

事件を要約しますと、
「造船所勤務にあたり、作業の際には安全服に着替えることが義務付けられており、
始業前・終業後のこの更衣時間を労働時間に含めるかどうか」
について争われたのです。
そこで、労働時間かそうでないかを判断するには、労働時間そのものの定義が
必要となります。逆説的な証明です。

判例は、
「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に評価できるか
否かによって決まる」
とし、この更衣時間を労働する上で必要不可欠な時間として労働時間であると
認定しました。

つまり、具体的な作業に従事していなくても、それが使用者によって義務付けられた
行為(更衣・準備・後片づけ)に要する時間や状態(待機)なのであれば、
それは、使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるわけです。



ただ、始業から終業まで全ての時間が労働時間に該当する訳ではありません。  



どのような時間が労働時間になり、あるいはそうでないのか、雇用契約の内容
(労務の提供と報酬の支払い)を遂行する上でも、今一度この「労働時間」について
改めて精査する必要があります。


次回は、具体的なケースについて、もう少し掘り下げて考察してみたいと思います。