近年休職や復職をめぐり労使間でのトラブルや紛争が急増しています。
その背景にあるものとは一体何でしょうか?そもそもの休職制度の定義から
裁判例に到るまで、その原因となるところについて考察してみたいと思います。

まず、休職とはその名のとおり「職を休む」
つまり、労働者が就労することが適切で無い場合について、雇用契約自体は
存続させながら労務の提供を免除あるいは禁止することです。
ここで重要なのが、「雇用契約を存続させながら」ということです。



本来の雇用契約の定義からしますと、労務の提供が出来ないのであれば、
契約内容の債務不履行として契約そのものが解消となります。
いわゆる、「解雇」です。
休職とは、雇用契約の内容が遂行されない状態でありながら、契約自体を
存続させるという意味で、解雇猶予措置としての側面があるわけです。


では、どのような理由により、労務の提供が出来なくなるのでしょうか?


一般的には、業務外の傷病を理由とする「傷病休職」から傷病以外の私的な理由
による「自己都合休職」、その他刑事事件に関して起訴された場合の「起訴休職」や
労働組合の役員として専従する「専従休職」などが挙げられます。

これらいくつかある休職理由の中で、その大半を占めるものはやはり「傷病休職」
であり、近年顕著に増えつつあるのが精神疾患による傷病休職です。

いわゆる「うつ」による労務不能です。

一昔前までは、就業規則に休職についての定めはあっても、その意味や
機能についてよく知らない使用者の方も少なからずいたと思います。
なぜなら、休職する社員がいなかった為に、幸か不幸かその規定について
目を通す機会や制度そのものを理解する必要が無かったわけです。

ところが、ここにきて「うつ状態」あるいは「うつ病」の診断書を携えて
休職の申し出をする社員が急増したわけです。

当然のことながら、現状に即さない規定もあり、現場はパニックに陥ります。
中には入社3ヶ月目の新入社員に対して、休職期間3年を認めざるを得なかった
ケースもあります。(そのように規定されていたが為に・・・)


休職理由やその期間については、あくまで法定の要件ではない為、
合理的な範囲の中で、どのような要件を満たした場合に休職とするか、
あるいはその期間をどのように設けるか等、制度設計自体のイニシアチブは
使用者側にあります。

一方で復職の条件や可否についても原則同様ですが、ただ、使用者と労働者との
間で意見の相違や利害の対立が生じ易い場面であるだけに、トラブルや紛争が
多発しています。

原則として、休職していた理由がなくなることで休職は終了し職場復帰と
なりますが、期間満了時点で休職理由が依然として続いていれば、解雇又は
自然退職として取り扱われます。

ところが、休職理由が消滅したかどうかの判断については、こと「うつ」など
精神疾患による場合については、その「治癒」をめぐって見解の相異が生じます。
つまり、労務提供可能かどうかは、外見だけでは判断できないわけです。


多くの裁判例もこの職場復帰について取り扱っていますが、
「復職」とは、休職に入る前の業務が元通りできることを指すと考えられており、
元の職務に復帰できないのであれば他に転換してまで雇用を続ける義務は無い
とされていました。(アロマカラー事件:昭和54年)

ただ、近年のこのような休職をとりまく事情を勘案してか、
当初は軽易な職務に就かせれば、程なく元の職務を通常に行うことができると
「予測」できるのであれば、復職を認めるのが相当であるとされています。
(独立行政法人N事件:平成16年)

また、復職の可否について使用者と労働者との間で意見の相異がある場合、
復職し得ない状態であることの立証責任は使用者側にあるとの見解もあります。
(エール・フランス事件:昭和59年)



このように、私傷病休職が労働者側の債務不履行である欠勤状態に対して、
解雇し得るところを猶予したものですから、本来労働者側にその責任が
ありそうですが、このように休職をめぐる環境は変わりつつあります。

今後も、この休職をめぐる労使間のトラブルは増加する傾向にあります。
休職制度をどのように捉え活用するのか、その意図を就業規則にどのように
落とし込んで労働者に伝えるかで、これからの労務管理に差が生じてきます。