「職業選択の自由」と聞いて、「憲法22条の歌」というタイトルがスグに思い
浮かぶのは、とある企業のCMの影響によるものでしょうか。
(と言っても、若い世代の方はご存知ないと思いますが)

今回のテーマは、職業選択の自由はどこまで自由なのか?についてです。
とりわけ、この職業選択の自由と真っ向から対立するのが、退職後の競業避止です。

自由と避止、この二つの関係は法律上どのようになっているのでしょうか。


憲法は経済的自由権の一つとして、全ての国民に職業選択の自由を保障しています。

「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」
(憲法22条)

ここでの職業選択の自由とは、他人に雇用されるだけでなく、自ら営業の主体
となって職業を選択すること(営業の自由)も含まれています。

ただし、憲法は国と国民との間について定めたものですので、この転職の自由は、
居住や移転と合わせて、国家との関係においてその自由が妨げられないことを
意味しています。(身分や職能団体など封建社会の縛りを解く意味合いにおいてです)

ですので、雇用契約に当てはめますと、使用者と労働者という私人間の問題を
ここで直接規律しているわけではありません。

民法の基本原則として契約自由の原則があり、だれとどのような契約を締結するか、
またはしないか、その内容や方法について当事者間にその自由が保障されています。

雇用契約も契約の一つのですので、この契約自由の原則が適用され、労働者は
どの会社に応募するのか、使用者はどのような基準や方法に基づいて、だれを
どのような条件で採用するのかは、「自由」です。

労働基準法や職業安定法などの特別法が、この雇用契約の締結や内容について
いくつか制限を設けていますが、原則として当事者の「自由」であること、
これはとても重要なことです。

雇用契約の終了場面(前回でもお話しましたが)においても、同様です。


一般的に、在職中の同業他社を含めた兼業を禁止することは、就業規則に
規定されていることが多く、現に雇用契約を締結している者同士において、
本来の労務提供に支障が生じたり、契約の一方の当事者(使用者)に不利益を
及ぼすことも十分に考えられますので、在職中に他と雇用契約を締結することを
禁止することは可能と言えます。

また在職中に知りえた機密情報や営業ノウハウなどを、漏洩しない旨の誓約書を
締結することも、秘密保持義務や使用者の財産保護の観点からも可能であると
言えます。


ところが一旦雇用契約が終了し、双方の当事者がなんら債権債務関係にない
状態になれば、話はそう単純には行きません。

個人(私人間)の自由と権利の行使は、時として激しく衝突します。

次回、競業避止義務を課すことによって保護されるべき使用者の利益と、
退職する労働者が受ける職業選択(転職)の自由への制約が、双方において
どのように整理・調整されるのか、具体的な判例も交えてお話したいと思います。