このシリーズも残すところ後、1回となりました。

ここで今回のタイトルにもありますように、働くことは労働者の権利として
認められるのかどうかについて、検証してみたいと思います。

雇用契約を結ぶ当事者として労働者、使用者にはどのような権利があるのでしょうか?


雇用契約の定義を改めて確認します。

「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対して
その報酬を与えることを約する」(民法623条)

この契約を結ぶことによって、双方の当事者が働くこと(労務提供義務)と
賃金を支払うこと(賃金支払義務)をお互いに約束することでした。

つまり、双方においてそれぞれの義務を負う「双務契約」です。

察っしの良い方はもうお気づきかと思いますが、権利と義務は表裏一体をなすもの
なので、労働者には使用者の持つ賃金支払義務に対して、賃金を請求する権利
(賃金請求権)を持っており、逆に使用者には労働者の労務提供義務に対して、
労働させる権利(就労請求権)を持っていることになります。

ですので、労働者が持つ権利は賃金請求権であって、就労請求権ではないと
いうことです。

そこで、度々議論になる労働者には「欠勤する権利」が認められるのかどうか
についても、自ずと答えが出ます。労働者には、労務の提供義務があるので、
当然その義務を自ら放棄あるいは免除する権利は、労働者側には認められない
ことになります。

労働者自らが労務の提供義務を免除する方法として、有給休暇の申請があります。
有給休暇が労働義務のある日についてその権利の行使が認められるのは、
会社の所定休日はそもそも労働者に労務を提供する義務が無いからです。
使用者も労働義務の無い日について、その義務を免除することはできないと
いうことですね。

では、使用者は労働者の労務の提供を拒むことは認められるのでしょうか?

例えば、使用者が労働者の労務の提供に何ら問題がないにも関わらず、労働者
に対して一方的に自宅待機を命じた場合はどうなのでしょうか?

労働者に就労請求権が認められないのであれば、使用者が労務の提供を受け
なければならない義務も無さそうです。ただ、このように正当な理由なく使用者が
労働者からの労務の提供を拒んだ場合には、使用者は労働者に対してその反対給付
である賃金の支払義務を免れることは出来ません。

このことは、言い換えると使用者は賃金を支払う限り、提供された労働力を
利用するか否かは自由であって、必ずしもその労務の提供を受領する義務は無い
と言えます。

これについて民法は次のように定めています。

「弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、
債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を
要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。」
(弁済の提供の方法:民法493条)

労働者としては、就労の意志があることを使用者に通知して自らの就労を受領する
ように催告しておくことで、債務不履行の責任を負担しなければならないリスクを
回避することができる訳です。

現実問題としてなかなか考えにくいことですが、法的な根拠に基づくとこのような
対応になります。

次回は、このシリーズも最終回です。民法から見た雇用契約、総括として
これまでの内容を少し振り返って見たいと思います。